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ワールドワイド酒クズの海外酒場放浪記

ワールドワイド酒クズの海外酒場放浪記

「家族無計画」は日本に足りない素敵な発想の本だよ

そろそろ海外で暮らし始めてから1年になる。

日本の情報は主にインターネットから得ることが多い私は、日本という国の閉塞感に改めて驚くことが多い。この閉塞感はどこから来るのかというと、自分に甘く、他人に異常に厳しいという立場のもと「国民総評論家」として出る杭を探しているところが根幹にあるのではないかと思う。いま日本のSNSは評論家で溢れている。ターゲットはころころと変わり、攻撃対象は著名人から一般人のtwitterアカウントまで多岐に渡り、日々戦慄するようなコメントが並ぶ。何か成功すれば叩かれるし、失敗しても叩かれる。不倫をすれば、ポジティブでクリーンなイメージで売っていたくせに本物は違うじゃないかザマアミロ!と攻撃の対象となる。なぜかそれは「いじめ」には該当しないらしい。政治だって、国政も都政もネガティブな空気に満ちている。舛添さんを辞めさせろ!という議論は活発だったけど、舛添さんが糾弾されるに至った会計の仕組みはどこに綻びがあったのか、という建設的な議論は展開されなかった。次の出馬も、「あいつはクソだ!」という軽い気持ちのコメントは見かけるが、「あの人がすごく良いことを言っているから応援しよう♪」という軽い気持ちのコメントにはなかなかリーチしない。たまたまわたしは大統領選挙期間中にフィリピンにいたのだが、日本とは全く異なるポジティブな空気にすごく驚いた。みんながそれぞれ、自分が支持した候補者の良さを教え合っている。スラム街でさえ、そうなのだ。

SNSとメディアの報道、相互に強く影響しあっているので結局はにわとりたまごであって、問題なのはツール(確かにどちらもネガティブ拡声器ではあるが)ではなく、「評論家」に徹することで心地よさを得てしまう日本人の弱い心理が問題なのだとおもう。

あるときから日本に帰りたくないな、と思うようになった。

出る杭は応援してもらえない、打たれるだけ。だが、平均的な杭に甘んじてしまうと生活上の問題が非常に多くなってしまう(主に金銭的)。人の顔色を伺うことが大事な社会がなんと小さいものなのかと、嫌気がさしてしまったのである。

 

ここまで書いたが、反論を想定するのが簡単すぎて自分自信も嫌になる。はいはい海外かぶれだね〜とか、お前も批評してるだけじゃないかとか、ああ言えばこう言うレベルで人を攻撃する言葉が次々に浮かぶ。そんな心理状態は健全ではないし、そんな空気が蔓延している国家も健全ではない。

 

そんなことをぼんやりと思っている時に読んだ、「家族無計画」がすごく良かった。

 

 

「正しい家族」は、もうやめた。

キャバクラで月2000万円豪遊、思い余って都知事選に出馬
「日本一炎上しがちな夫」こと起業家・家入一真氏と18歳で結婚し、即出産。
31歳で離婚し、腹をくくって社会人デビュー。
ネット育ちの新世代エッセイストが、
なにかと息苦しい現代家族の渦中から“寛容"と“自由"を提言する。
強く愉しく新しい〈家族論〉エッセイ
ウェブマガジン『cakes』の人気連載、ついに書籍化! 初の著作。

「シングルマザーの子育て」「ママ友問題」「セックスレス」「不倫」「自己責任論」……
家族にまつわるデリケートな問題に切り込みます。

 (amazonより)

 

とにかく彼女の結婚生活は波乱に満ちていた。付き合うのも、結婚するのも、出産するのも、不倫と別居に苛まれるのも、ここまで振り切っている人はたぶん、あまり、聞いたことはない。

それなのに、とてもポジティブなエネルギーに満ち溢れた本なのだ。

それは、著者が全ての事象に対して肯定的であるからだと思う。

夫がキャバクラで月に2000万使えば、自分もキャバクラに行ってみて、男の人はこんな風に甘やかされたいんだな。と納得する強さ。ママ友の付き合いの煩わしさよりも、ママ友の持つ太陽のようなパワーが大好きだと言い切る強さ。とにかく強い。いつだって物事を一歩引いてポジティブに俯瞰することのできる能力、そして真摯に向き合って努力をする能力、この力があるからきっと彼女の周りには素敵な人がたくさん寄ってきて、そしていまこうやって本を出すに至っているんだと思う。

 

人に寛容であるためには、自分が強くなければならないし、その強さはプライドではなく、相手を思いやる優しさのことで、結局それらは補完関係にあるのであろう。

まず相手をそのまま受け止める強さ。そして、自分自身のことも、過大評価も過小評価もせずに信じてあげる強さ。そのふたつを意識したら、「評論家」から「当事者」になることができるのかな。そうすれば今よりもっと、人に優しくなれるような気がした。

 

人生はいろんなことが起きるけど、ほとんどのことは最初の想定通りにはいかない。

その時に、それを受け入れて楽しめる自分でありたいなと思った。

いいなあ。わたしの人生も、びっくりするようなハプニングに満ちるといいな。何が起きても、何が起きなくても、こんなふうに自分と世間とのバランスをとって生きたい。

 

結婚していても、していなくても、働いていても、いなくても、世間の顔色を伺うのに疲れた人にも、すべての人におすすめできる本。読後感も爽快で、世の中がきらきらして見えるよ。